日本人にとって中华料理には「绍兴酒(シャオシンチュウ)」が欠かせません。「绍兴酒」は上海市の南に位置する浙江省の绍兴市を代表する酒で、米を主食とする南の中国文化を背景としています。一般に米から造られる酒は「黄酒(ホワンチュウ)」と呼ばれますが、その内、长期间熟成されたものが「老酒(ラオチュウ)」と呼ばれ、绍兴酒が「老酒」の代名词となっています。また、「黄酒」の色の薄いものが「清酒(チンチュウ)」と呼ばれるようですが、日本酒(清酒)はこれに近いものと言えそうです。これに対して、北の中国文化から生まれた酒は、小麦や高粱(カオリャン)を原料とする「白酒(バイチュウ)」と呼ばれるアルコール度数45度から55度の强い酒で、日本の焼酎、ロシアのウォッカに当ります。中国で宴席に招かれると、円卓のそれぞれのホストから、料理が出る都度「乾杯」を要求されますが、通常、この白酒が乾杯に使われます。笔者が10年ほど前に中国に频繁に出张し、宴席に招かれた时代には中国の乾杯の仕方も大分変わって来ていて、东北3省など地方では「白酒」での乾杯でしたが、北京、上海、広东省など都会化が进んだ都市では、フランス产高级ワインや高级ブランデーでの乾杯が流行っていました。今では更に都会化し、ワインや绍兴酒などアルコール度数が低い酒で乾杯することが多いようです。绍兴酒を采り上げたのは、何も酒饮みの话をするためではありません。绍兴酒に因んだ中国の丽しい伝统を采り上げたかったからです。香港驻在时代に中国本土や香港で绍兴酒を注文する际は、何とかの一つ覚えで「花雕酒(ホワジャオチュウ)」または「加饭酒(ジャーファンチュウ)」と言って注文していましたが、特にその背景について気にしていませんでした。调べてみると、加饭酒の熟成期间の长いものが花雕酒とされていて、花雕酒にはその名の基になった次のような由来があることが分かりました。「绍兴の古い习惯では、诞生3日目を祝って赠られた糯米(もちごめ)で黄酒を造り、1ヶ月后の満月の日に亲戚を集めて祝宴をし、密封・杀菌した瓮(かめ)を父亲が埋め、この酒を娘が嫁ぐ时に、父亲が掘り出して、母亲が『喜を二つ并べた字:シー』と书いた赤纸を贴り、瓮に雕り师が雕刻をし、美しい彩色をして、『シーチュウ』として持たせた」(ウィッキペディア日本语版)とのことです。日本のお宫参りや七五三を想起させますが、花雕酒の风习には父亲が生まれたばかりの娘の嫁入りを楽しみにし、これを正に「手塩にかける」ように长い时间を挂けて祝い酒を造るという素朴な庶民の愿いが込められているように感じます。中国のやさしい伝统から生まれた「花雕酒」ですので、次にこの酒を饮む时はその意味を思い出しながら楽しむことにしたいと思います。